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そんなふうに、寝て起きたら忘れているようなことを考えていたら。
コンコン、と、ガラス戸が叩かれる。
灰皿を見るように下げていた顔を上げると、そこには傘を2本持った恋人がいた。
……まだ恋人、だよね?
帰るよ、なんて行って、喫煙ルームに入ってくる。
タバコの煙、苦手なくせに。
けれど、こんな雨の中で迎えに来てくれる相手がいるというだけで。
こんな煙だらけの小さな箱の中に、迎えに来てくれる相手がいるというだけで。
何故だかこんなにも心が満たされる。
だから火のついたままのタバコを水の張られた灰皿へと落として、火種が消える音を聞きながら、恋人の腕へ、緩く私の腕をからませた。
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