金星の櫛

　忽然と現れた未確認飛行物体は巨大な刺々しい巻き貝の形をしていた。

　太平洋冲の空に浮かぶそれは一瞬で全世界の電子機器を停止させる科学力を持っており、如何なる攻撃でも不可侵だった。
　地球の征服も容易いだろうが、異星人は交戦を望んでおらず要求はたった一人の少年の引き渡しだった。

　それがなんで僕なんだ？

　軍の兵士がやってきて拉致された時、僕が一週間後に決行しようと秘めていた計画が漏れたのかと思った。けれどその為の銃や爆弾製造の薬品は未だ購入していないし誰にも話してはいない。それは罪になるのか？

　僕が連れて行かれたのは大きな巻き貝型宇宙船の内部だった。待っていたのは殻のない貝の中身のような小さな精神軟体生物たちだった。

　僕は３個の箱がある大空間に通され独りにされた。

　最初の箱が突然口を開けて僕を飲み込んだ。