金星の櫛

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 中には始まりの点と伸びる線しかなかった。僕にはその記号の交差が未来の出来事を表しているのが分かった。何故ならば僕自身も点線になっていたからだ。 「   我々の唯一の救いであっただろう少年貴方は    、一週間後に無差別銃乱射殺人を犯し射殺されました   」  記号が僕の計画を知っていて過去形で語るのは何故だ?   点線で存在することに慣れたとき、2番目の箱がマトリョーシカのように1番目の箱ごと僕を飲み込んだ。  次の僕は絵で描かれていた。言葉は全てフキダシに収まり、体験はコマ割りされた。銃撃音や悲鳴は誇張した太字で書かれ枠からハミ出していた。それは僕の記憶の漫画化だった。ジャンルは陰惨なバイオレンスアクションだった。  続き飲み込んだ3番目の箱で僕は実際に襲撃事件を起こし立て篭っていた。そして射殺され死んだことを憶えている。どうして実行していないのに生々しく記憶にあるのだろう?  それを理解出来たのは視えない4番目の箱に飲み込まれたからだ。
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