金星の櫛

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 4番目の箱が時間の制約から僕を解放したのを理解した。昨日今日明日が並列して見える。記憶が正しいとすれば僕はやっぱり銃を乱射して死ぬのかな。  5番目の箱の飲込みの音を聞いた。その中で僕は僕たちのやってきた様々な行動を俯瞰で見ていた。  6番目の箱は上下左右前後と今昔の概念を取り除き、カラビ・ヤウ多様体で存在する僕を全てのアングルで同時中継する曼荼羅だった。  7番目の箱は神の視点で透過する。  やがてミクロもマクロも同価値になった僕の世界が折り畳まれ始めた。肥大したマトリョーシカが無理矢理に小さい8番目に押し込まれる。更に畳まれる世界は9番目と10番目の箱に最小化して収まり11番目の箱で僕を極微の素粒子サイズ近くまで収縮させた。ニュートリノやクォークやミュオンでサッカーやバスケやテニスが出来るほどに。  最後のナンバリングの無い箱では1から11までの全ての僕のプレイリストをDJが選曲するように、好き勝手に繋げたり重ねたり擦ったり巻き戻したりリミックスして自分だけの新しい奏でを響かせることが出来た。
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