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やめろ。やめてくれ。
そいつらに余計なことを言うな。
そのふたりは仲間だが、それほどの関係でもなんでもない。
「ち、ちょ、ちょっと開発ってさ……」
「開発っていう響きがいいね」
にこにこと軽快な笑みをみせる白魔道士。黙ってろと心でつよく念じるが効力はない。
「………わかった。やろう」
深くうなずく黒騎士。
「は?」
「やるなら娼館を貸し切るぞ」
「は?」
「それなら僕がすぐに手配するよ」
にこにことほほ笑む白魔導士。
「ああ。よろしく頼む」
「任せてよ」
黒騎士と白魔道士はこくりと互いをみつめ合って頷いている。そして長い脚を動かし、数歩ほど前に出てじりじりと俺に近づく。ちょっと落ち着け。まってくれ……。つうか近寄るな。
「い、い、いやっ……」
「おやじ、必要なものをくれ」
「あいよ」
「あ、あとパパローションもちょうだい。あといつもの練り薬も」
「あいよ」
「ち、ち、ちょ、やめ……」
両手をがっちりホールドされて、逃げられない。
「おまえのためだ。やむを得ない」
「は?」
「命に関わることだしね、全力でレベル上げにつきあうよ」
ポンと肩を叩かれる。
全力ってなんだ。こわいだろうが。
ぶんぶんと首を横にふると、魔道士と黒騎士は見えない圧が高まる。
「ひっ……」
「おやじ、こいつのケツのレベルはいくつだ」
「ゼロにちかい。それよりも低いかもしれねぇな。それでも魅力度はあるから、発情期の動物には気ぃつけろよ。ま、餓死寸前の猛獣にでも遭遇しねぇ限り大丈夫だけどな」
はっとなって、ふたりの整った顔をまじまじとみつめる。二人は聖騎士だ。灰色の瞳と、青の瞳には燃え滾った情欲を宿しているようにも感じる。
「いっ……。じ、自分で……」
「自分じゃ無理だ。だれかにやってもらえ。男のケツなんてそうやすやすとゆるまねぇし、出口が出入り口になるなんてそうそう簡単じゃねぇ」
げらげらと下品な笑い声を立てて、また酒をあおるように呑んだ。ゆるゆるなんていやだ。尻は出口のままでいい。
「……っ」
「すぐにレベルを上げるぞ」
「そうだね。こういうのは早いほうがいいよ。おじさん、これもちょうだい」
白魔導士は卑猥な形の筒棒を手にして、おっさんに出していた。
「まいど~!」
ランスが金貨一枚を差し出すと、この村のギルド出張所であるギルドマネジャーのおっさんはうれしそうに手をさすった。そうっと店から出ようとして首ねっこをつかまれる。
「おい、逃げるな」
「……うっ、ルゥ」
「くぅ……」
店から出ようとして、両手を掴まれる。外では残忍で凶暴といわれる騎獣が柔らかい視線をこちらに向けていた。
「ルゥ、待たせたな。行くぞ」
「クッ!」
黒騎士が手綱を手にすると、うれしそうに首を上げた。所詮主人が一番だ。すでにペット化している。
「ソータ、行くぞ」
「楽しみだね!」
「いやだ。やだやだやだやだ。ケツなんて鍛えたくねぇ!」
「クッ!」
どうしたらいいんだ、俺。
なんだかわからないうちに、俺たちはチートな卑猥な尻の存在を発見してしまうことになった。
両腕をがっちりと掴まれ、俺はずるずると引きずられながら娼館の二階へと連れていかれる羽目になった。
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