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「……あのさ、ちょーっと質問!」
「なになになに? ヤバノちゃんからの質問とっても気になる~」
「真剣に聞いているんだよ。まずだ。まず、ランスは聖杯を探す気はあるのか?」
「あるよ。あるある~」
かるく返されて、俺はさらにいらっときた。
この優男、ランスロットはいつもふらふらしていつの間にか姿を消している。結局、聖杯探求は俺と黒騎士の二人でしている。
魔物討伐は黒騎士があっという間に一太刀で敵を切り倒してしまうし、目の前で起こるスチルイベントみたいなのを体験している。
それでも魔物討伐の最中にひよって叫んで戦っているわけで、どうして俺がこいつの代わりをしなければならないんだといつも思うのだ。
「ランスはいつもいないじゃんか。結局聖杯探求はクロさんと探しているし……」
「いいじゃん。ちょっとはクロと仲良くなった?」
「少しだけ仲良くなったよ……」
「……すこしだけか」
「ぐっ」
ぎろりと睨まれて、鋭い視線にひるんでしまいそうになる。
顎を掴まれてキスする仲までは進展したが、普段はこんなかんじで変わらずこわい。つうか、さっきまでこすりこすり爛れた行為をされていたわけで。
「ま、まあまあ仲いいよ」
「でもさ、ソータは僕たちと一緒にいないと娼館行きか、どっかのやばいやつに捕まっておしりが壊れるくらい開発されちゃうじゃん。それか死んじゃうんだよ。それよりはマシでしょ?」
「うっ、それは…………、そうだけど」
どっかの知らないおっさんのちんぽをいれられるよりはマシだ。
さらにそのままケツを開発されずに死ぬのもいやだ。ほかに方法がないのかと訊くと、なんというワガママなやつだとおっさんに窘められた。
「あ。話の途中なんだけど、時間だ。ちょっと野暮があるんだ。ごめんごめん。じゃあ、また夕方にでも戻ってくるよ~」
「あ、ちょっ……」
ひらひらと手を振って立ちあがると、ランスはその場からいなくなった。クロと俺だけがテーブルに残される。
「……逃げられた。くそっ、尻のレベルなんて上げたくないのに」
「それは困る。聖杯が見つからないからな」
「聖杯なんて本当にあるんですか。あ、いや、あるんでしょうか」
「敬語は必要ない。やめろ」
「…………はい」
「ソータ、ルゥを連れて武器屋に行くぞ。剣を見たい」
圧がすごい。鋭い眼光に俺はこくりと頷いて従うしかない。
「…………はい」
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