第33章 古式魔法

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「では全員、起立するように」 ぞろぞろと重い腰を上げて研究員達が立ち上がる。そのすぐ後に、最下段の右手入口からベレスフォード所長が姿を現す。その次に術式統括ユニット長のハリマン、術式装填ユニット長そして神力解析ユニット長が続いて中央に並ぶ。だが、ハルフィアは前を向いたまま、扉から目を離さなかった。 もう、ここで来るはずだと。 その念を反映するかのように、白い人影がまず目に映った。連合軍特殊騎士団第3騎士サイラスだ。そしてその後に、彼は姿を見せた。 着崩すことなく白衣を纏った青髪の少年。 「おい、上席いるじゃねえ、か・・・・・・」 ロッドウェルも、それに気づきこちらに小声で囁く。だが、ハルフィアの冷たい視線に、流石に尋常ではないことを悟ったらしい。 「どうした、セノーリア・・・・・・」 「・・・・・・直に分かります」 最後に管制室に入ってきたのは第5騎士のオルコットだった。その三人は中央へは進まず壁沿いに並んだだけだった。周りの研究員もその存在に気づき管制室にざわめきが起こっている。姿はユクリウスだが、彼が俯いているせいか、その本性が確かなものなのか、誰も気づくことはできない。 「それではまず、新たな組織体制について説明する」 パルトローから渡された紙をベレスフォードが受け取り、それに軽く目を通してから顔を上げて声を張り上げた。 「神力断絶第1フェーズ実行において発生した事故を受け、既存の3ユニットに加え、新たに『危機管理ユニット』を創設する。この危機管理ユニットの命令系統は術式統括ユニットを筆頭とする3ユニットとは独立したものとする。主な構成員は今後中央とアマティック社からの増員により対応するが、所掌はリスクマネジメント及び安全設備の改善等の業務とする」 つまりは、もう二度と耐圧ガラスの向こう側から高濃度の魔粒子が逆流するなどといった初歩的なミスを犯さないようにするための組織。所長の表向きの言葉だけを捉えると、そうなる。 「では辞令を交付する。まずメイサーク首席」 名を呼ばれたメイサークが階段を降り、所長の前に立つ。 「本日を以て、術式統括ユニット上席研究員 へ昇格とする」
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