第33章 古式魔法

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「ま、安心したよ。さすがだな」 褒められたのか、今。その答えを求めようにも、エリザは書類をまとめ脇に寄せると、何かの冊子を手に取って向かいのソファに歩いてくる。 「天国から地獄に落とすようですまんが、課題だ」 「げ」 清々しい顔をしているエリザを凝視する。実践が出来ない代わりに、こうやって魔法学の論文を読み要約を書く課題を渡されているのだが、正直、頭が痛くなっても暴走しても実践授業をやっていた方が何倍もマシだ。 「今度はどういう内容だよ。この前は、『上級魔法の壁』とかっていう訳わかんねぇ話だったけど」 「それはそれは、じゃあ次の課題もさぞかし楽しめるだろうな」 テーブル越しに渡される資料を手に取る。そして、そのタイトルに目を這わせた。 「干渉魔法が、及ぼすリスク」 それが何を意味しているのか、そしてエリザが何を意図してるのか、分かってしまった自分が怖い。 「これで、俺の身に何が起こったのかよく勉強しろってか」 「おい、それが教師への口の利き方か」 サッと奪われた課題で頭を(はた)かれる。もちろん痛くなどないのだが。 「まあ、私が言いたいことは大体あってるがな。君が彼らに何をされ、何故今まで苦しんできたのか、それを知って欲しいんだ。そうすれば、自分をコントロール出来るようになるし、何より、記憶を取り戻せることもできるかもしれない」 「え……も、戻せんのかよ!」 テーブルを鳴らして身を乗り出すも、エリザは落ち着けと言わんばかりにその手にした課題とやらをヒラヒラ煽るだけだった。 「可能性としてはな。いいかユース。誰かに記憶を狂わされようが、それは君の記憶に変わりはない。所有者は君自身だ。今君の状態をわかり易く例えるなら、記憶に分厚モヤがかかっていて、そのモヤが蜃気楼のようにあり得べからざる幻想を君に見せているだけだ。君はそのモヤが見せる世界に惑わされもがくことで、長らく苦しめられてきた」
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