第33章 古式魔法

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その指示に、迷うことなくサイラスが歩み出る。そしてその後ろを俯いたまま、青髪の少年とオルコットが続いてくる。一歩前に出たベレスフォードの隣に三人が並ぶ。その異様な光景に、誰もが所長からの次の言葉を待っているようだった。 「こちらにいらっしゃるのは、視察の際にもお越しいただいた第3騎士サイラス・インヴィクター・オグバーン卿と、第五騎士ルイ・インヴィクター・オルコット卿である。本日を以て、両名を危機管理ユニットの特別監視官へ任命することとなった」 その特殊な役職の響に、もう誰も驚きは見せなかった。むしろ、胸に疼いている違和感と恐れを早く取り除いてくれとばかりに、ただ一人に皆が視線を張り付かせていた。 「そして、ユクリウス上席だがーー彼の席は一時凍結とする」 「所長、それはなぜですか」 職員の動揺を背に、前列にいた一人の職員が問いただす。 「前上席は職務遂行が不可能となった。だからだ」 「では、彼は」  僅かに震える声で、手のひらを返して正面のユウリウスの姿をした少年を指し示す。 「もうユクリウス上席はここにはいない」誰にも有無を言わせまいと所長が荒く息継ぎをする。「この体は、本来の持ち主のもとへ返った。今ここにいるのは、体の元々の意識……ジェノスだ」 「そんな!」 堰が切れたように、管制室は動揺の声で溢れかえる。言葉を失う者、同僚と不安をぶつけ合う者、彼らの驚愕と不安は抜かりなく正面に経つ華奢な少年の体に向けられている。 「諸君、落ち着きたまえ!」 「この状況で落ち着けというのですか、所長!」荒ぶる声とともにその職員が指を鋭く指を少年へ突きつける。「なぜまだここに置いているのです! これでは、我々の命が!」 「彼の首には厳重な拘束装置を装着させている。首元に赤い装置が見えるだろう。少しでも魔法を使おうものなら、即座に反応し彼の行動を制限させることができる」 「それは当然のこと……ですがジェノスは、魔法だけではないはずです」 「そのために三名を特別監視官に任命した」
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