第33章 古式魔法

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 脂汗をにじませた職員が言わんとしていることはハルフィアもすぐに分かった。この魂の抜けたような体たらくでは想像できまいが、彼の身体能力は異常なまでに高い。ジェノス全般に言えることだが、この歳で当たり前のようにソレスタを扱い、躊躇することなく高威力の魔法を使用することも。今この場で彼と対等にやり合えるのは、まともにソレスタを発動できる連合軍の騎士とハルフィアだけだ。 「特別監視官が24時間体制で彼を監視する。皆思うところはあるとは思うが、ユクリウス前上席が不在となった中でも、計画を遂行させるには必要な判断であることを理解いただきたい」 「では彼は、この計画に協力すると」 「ええ、この私にそう誓っている」 「そんなこと信じられますか。ジェノスですよ。モートルの忠実な僕ですよ。逃がすつもりじゃないんですか!」 「その時は、相応の対応をする」二人の会話にサイラスが割って入った。「もし、このジェノスが謀反を起こしたら、連合軍特殊騎士団総力をあげてぶっつぶす。それで計画達成があと百年先になるかもしれねえがな」  その言葉に、さすがに首席も二の句を継げなくなったようだ。もうこれ以上の反論はないと思い、ハルフィアは視線を外し、一つも表情を崩していないベレスフォードを見た。 「よろしいな。彼の配属だが、危機管理ユニット付の術式統括ユニット術式統合第2担当に仮配置とする。ロッドウェル主任!」 「は、はい!」  他人事の雰囲気が漂っていた一角でロッドウェルが無駄に物音をあげて立ち上がった。 「彼に、演算装置の使い方を指南してくれ。我々も、君も時間がないのは分かっている。だからこそ、二日でマスターさせるように」  ここからでも返事もするのを忘れて強張った顔がよく見える。その様に噴き出すことはなかったのは、それこそハルフィアにとってもこれっぽちも他人事ではないからだ。先輩の泳いだ目がハルフィアという錨にひっかかると、「君もやるんだよな」とその眼力で訴えてきた。
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