第33章 古式魔法

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「それでは、辞令は以上だ」 「所長、最後に」  同じくこちら側に立っていたハリマン・ユニット長が、ペンを持った手を上げ、そのままペン先で二人の騎士に挟まれた少年を指し示した。 「その、なんと呼べば……」 「ああ、失礼した。彼のことは、西方研究所時のコードネームで呼ぶように。“コープス ”だ。さあ時間がない。各自作業に戻り、一刻も早く事故前の状態へ復旧させるように!」  その一声で職員は中断していた作業にとりかかりはじめる。ただ雰囲気は重苦しいままだ。 「セノーリア“監視官”、コープスをロッドウェル主任のところに連れて行け」 「承知しました」  ベレスフォードが指を振って壁側の席を指し示す。まるで早く全員の視界から彼を消してくれとばかりに。 「……来い」  極力会話をしたくない考えが面に出てしまう。だがその一言だけで、彼は大人しく騎士の間から抜けだしてこちらに向かってくる。それが動くさまを気持ち悪く見ている周りの視線を引きつけながら。それに気づかないふりを決めこんでハルフィアは先へ進んだ。通路階段を上っていく間、勝手に人やら物が避けてくれるのは助かった。いつもなら何かしらファイルや資料をひっかけて散らかしているものを。 「ロッドウェル主任連れて来ました」 「お、おお。とんでもねえ土産もってきちまったな」 「そんな喜ばないでください。つまらないものですよ。どうしますか、彼は管制室担当ではないので、設計室に連れて行きますか」 「お、おう完全に置いてきぼりだな俺。その前にセノーリア殿の席はどうなってんだ。第1担当になっちまったのか?」  そわそわとハルフィアとコープスを見比べている。こんな状況でも、まともにコープスを見れている時点で彼は本当に人がいい。 「復旧作業をしていたせいで第1担当付けになったようです。しばらくは第2担当の仕事もしながらになりますがね。設計室、私が使っていた席を彼に使わせてください。第1担当はほとんど管制室での作業のようですから」
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