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「うわー可愛がってた後輩に先越されたってやつか。まあわりぃ気はしねえけどよ。あれ、じゃあ……」
ロッドウェルが1台の演算装置を指差す。さっきまでハルフィアがいじっていたものだ。
「それ、ロッドウェルさんのですよ」
「なんてできた後輩、いや監視官!」
軍隊並みの規律ある礼をかます先輩。この状況で、それだけのウィットを見せられるとは本当に大したものだ。
「喜んでられないですよ。聞いてましたか。彼、二日で完璧にさせないといけないんですよ。ご自分の設定に一時間も浪費してられますか」
「おう、それなんだが、所長の二日っていうのは今からカウントして48時間後だと思うか。それとも明後日の朝までだと思うか」
「それ、真面目に聞いてますか。前者なら間に合うと?」
「……だな。やるしかない、か」
ロッドウェルが後ろに目線をやる。ハルフィアも最低限で背後を見るが、コープスは俯いたまま、なんの反応も示していない。その様も、ハルフィアの癪に障った。
「じゃあ、とりあえず設計室に連れていくかな! えーと、“コープス”でよかったか?」
「ええ、そうです」
なんでそっちが応えるんだとロッドウェルが視線を向けてくるが、ハルフィアはあえて気づかないふりをした。
「私は危機管理ユニットのミーティングがあるので失礼しますが、何かあれば読んでください」
「それは嬉しいが、だがまあ第1担当所属の監視官様だって忙しんだ。無理するなよ!」
そう軽快にハルフィアの肩を叩くと、コープスに「ついてきな」と軽く声を掛けて管制室を後にしていく。これまで世話を焼いてくれた先輩の後ろをついていく、忌々しい背中。その様に、無性にわだかまりを覚え、ハルフィアは無理やり目を背けると彼等とは逆の方向に通路を下っていった。
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