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観音開きの扉を片方だけ開けるや否や、奥にいる人物とばっちり目があった。その瞬間、これはヤバい事になったに違いないと悟った。
「ちょ、タドル君閉めちゃダメですって」
そう後ろから言われて初めて自分が逃げようとしていたことに気づいた。フレッグが後ろから手を伸ばして扉を再度開いてしまう。
「フレッグ、これはヤバいと思うんだ」
「そんなの、エリザ先生に二人呼ばれた時点で分かっていたことじゃないですか」
「え、そうなのか。俺は思わなかったけど」
「じゃあ、今聞きましたね」
「何をしている、入れ!」
そんなごにょごにょと言い合っていたら案の定激高が飛んで来る。タドルとフレッグは揃って扉を押し開け中に入ると、兵隊のごとく入り口の前で整列するしかなかった。
「いいから、座りなさい」
若干の溜息が混じっていた気がする。フレッグと目を合わせながらも、エリザに指さされたソファに向かい、慎重に腰を下ろした。エリザが奥から何かを漁っている音がするが、それすらも見れずにただただ目の前の木目のテーブルの年輪を数えることしかできない。そしてついに、エリザが近づいてくる。
「さて、これに見覚えあるな」
どん、とテーブルの上に広げられた幾つかの本。それが何か、すぐに分かった。そして同時にサッと頭から血の気が引いてゆく。
「ユース、なんでこんなものを図書館から借りていた?」
向かいのソファに座ったエリザがそのうちの一冊を手に持った。それは、奇しくもタドルがこの分野と出会った初めの本――「術式魔法入門」だった。
「あの……み、見てはいけない本だったんですか?」
黙りこくったタドルよりも早く、フレッグが口を開いた。
「そういう訳ではない。ただ、上級生でもあまり閲覧しないような古い分類の書庫にある本を、何回も、そして似たような本を何冊も借りているものだからな。気になってな」
「お、俺が他の勉強サボってそんな本読んでるって思ってんのかよ」
何とか絞り出した声は、自分でも分かるくらい震えていた。せっかく見つけたのだ。失った親友を取り戻す、唯一の可能性を。自分だけの力で。
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