第33章 古式魔法

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「そうではない。最近の君は、ちゃんと課題もやっているしな」 「じゃあ! 魔法ができない癖にこんなの読んで、馬鹿らしいと思って――」 「ユース!」エリザの眼が、まっすぐこちらを捉えた。「落ち着きなさい。すまない。別に私は、君達を責めてはいない」  その声は、自分を優しく気遣ってくれる時のものだった。憤った身体がしぼんでいくように、タドルは「すみません」と小さく口にした。 「ただ、何かやろうとしているなら、私に早く相談してほしかった。言っただろう、“一人で抱え込むな“と」 「……はい」  それは、孤独の檻に勝手に閉じこもっていたタドルを変えてくれた言葉。エリザもきっと、頼って欲しかったし、無茶なことはしてほしくなかったのだろう。気づかぬうちに、彼女の気持ちを蔑ろにしていたのだ。 「君が、これに興味を持った理由は察しがついてるから、今ここで聞くつもりはない。だが、だからこそ君達だけで動いて欲しくはなかった」 「じゃあ、今でも術式魔法は使えるんですか!」  エリザの言葉にフレッグが真っ先に反応する。無論、タドルはエリザの意図も汲み切れず、ただ二人を見比べるしかなかった。 「ああ。だがそんな容易く扱っていいものでは無い。術式魔法は、古式魔法と呼ばれているだけあって、世界創造初期の魔法だ。すなわち、この魔法形式は創造神とより深くつながりがある、と思われている。分かるな?」 「……禁じられた魔法ということですか」 「実質的には、な」 「でも、一般書架の本だから別にいいだろ」 「それを少し見るだけならな。でも君は何回も借りすぎている。大体の司書が私の知り合いだったからよかったものの、ノービス側の職員に目を付けられていたら面倒なことになっていたぞ」  それにはさすがにタドルも口を閉ざした。 「そういう本だという事は、これだけ読んでいたのだから気づいていただろ」  もちろん、分かっていた。人生で一番といっても過言ではないくらい、真面目に術式魔法のことを勉強した。フレッグに詠唱魔法のことも教えてもらいながら、その違いも自分で理解できるようになった。だから本に直接的に書いていなくとも、術式は創造神と魔粒子を意識した構成になっていることも肌で感じ取っていた。
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