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「もちろん分かってたよ……」沈黙を破る様に、ポツリと呟く。「ヤバイんだろうなって思ってた。だけど、止めるつもりなんかなかった。最初は、どんな方法を使ってでも魔法を使えるようになれば、記憶を取り戻して、闘えるようになると思ってやってた。けど、それだけじゃなかった」
「タドル君……?」
「ごめん、フレッグにも言ってなかったよな」
隣を見れば、心配するように眉を下げたフレッグと目が合う。
「術式魔法を知れば知る程、レイズに近づいて行っている気がしたんだ。創造神とか、ジェノスだとか、そんな言葉は一言も書いていないのに、術式を見ていると、アイツがかつて見たものと同じ景色を見てるんじゃないかって思えて……辞めたく、なかったんです」
背を伸ばして、真っすぐにエリザを見た。
「先生、俺から奪わないでください。俺も、もう何も奪われない様に必死で闘ってるんです!」
エリザの黒い瞳が、タドルを捉えて離さない。
先生たちに口答えをしたことは何度もあった。道理が通らないことも、我が儘も、そうだと分かっていながらしつこいくらい口にしてきた。
でも、今は違う。こればかりは譲れない。これは揺るぎない自分の正義だから。
「タドル・ユース」
ピンと糸が張ったような声に、拳を握りしめた。
「君も、変わったな」
エリザが口元を緩めてほほ笑んだ。
「安心しなさい。私は別に、金輪際術式魔法に接触するなというために君達を呼んだんじゃない」
「え?」
「二人だけ勉強していたら、一向に魔法を使えるようにもならんだろ」
「そ、それって……」
「まさか! 先生は術式で魔法を使えるんですか!」
耳をつんざくようなフレッグの歓喜あふれる声に思わず二人を見比べる。さっきまでの神妙な空気はどこへやら。エリザも完全に笑っている。
「私を誰だと思ってるんだ。最終魔法を極め、かつこの学園にとってはひねくれ者だぞ」次の瞬間、エリザが口元を引き締めた。「もう魔法の中で学ぶものと言ったら、術式魔法しかないだろ」
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