第33章 古式魔法

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「マジ、か……」 「ああ、マジだ」  これは現実なのか。ついには普段彼女の口からでてこないような単語まで出てきているが。 「とはいえ、私が使える術式魔法も数えるくらいだ。先に言っておくが、君が全身全霊を捧げても直ぐに成果が出るとは限らない。三年生になっても、魔法を使えるようにならないかもしれない。それでも、やれるか」  エリザからは笑顔は消えていた。それでも、タドルの決意は変わらない。 「もちろん、やるよ。何もしないで失い続けるよりはずっとマシだ」 「聞き届けた」そう言い、エリザが口角を上げる。「今の言葉、忘れるんじゃないぞ」 「当たり前だ」  もう、何もなせずに己や周りの人に憤っていた自分には戻りたくはない。記憶がなくても、心が覚えている親友と過ごした日々を、必ず取り戻す。 「ハリスン、君はどうする」  エリザの視線が隣に移る。そう、フレッグはフレッグの独学に付き合ってきてくれたが、正直、エリザがいれば彼の役目はもうないのだ。寂寞な思いと、そうはいえどもこれ以上彼を巻き込めないという想いが交差する。 「先生、それはどういう意味ですか。僕にも、教えていただけるんですよね」  こちらの不安をよそに、フレッグの目は決意と好奇心で輝いていた。目が合った時、フレッグが口角を上げて頷いてくる。そう、もう自分は独りではないのだ。 「よし、では早速始めようか」  二人揃って前を向くや否や、エリザは出入り口に向けて軽く指を振る。ガシャンという金属音が扉から聞こえた時、鍵をかけたのだと気付く。そして流れるように手先を今度は机に向けると、その方向から何冊もの分厚い本や紙束、そして丸められた大判用紙が机の上に滑り込んでくる。 「君達は、術式をどこまで理解している? 二人とも同じレベルか?」 「あ、ええと……効果範囲の指定と……あと、詠唱魔法でいう基本属性区と形態区の術式はだいたいなんとか」 「なるほど、悪くはなさそうだ。ではユース、この紙に、『フレア・チェック』の術式を書いてみろ」
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