一章 邂逅

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イワナガは優雅に腰を折って礼をした。 「大変失礼を致しました」 その物腰を見て、少女は自分と同じ雰囲気を感じ取ったのだろう。目が一瞬にして穏やかになった。 「憐れむなどということはございません。姫さまのお顔を見ようとこういう顔つきになっただけです。私は右目が良く見えないので」 イワナガは自分の右目をそっと指差した。イワナガの右目は黒目が菫色がかっている。白目も血が通っていないように純白だった。それを見て少女はハッとしたようだった。申し訳なさそうに目を伏せる。 「すまない。知らぬとはいえ、無礼であった」 イワナガは静かに首を振った。 「憐れむとおっしゃいましたが…」 イワナガは年若い姫を見やりながら、 (不思議なものだ。夢の中でこんなにしっかりと会話をしているとは) 心のうちでおかしくなっていた。と同時に、生来好奇心が強い性質なので、俄然少女に興味が湧いて来た。 「姫さまがどなたかを憐れんでいらっしゃるお気持ちが、私の顔に映ったのでは?」 イワナガの言葉は思いがけないものであったようだった。少女は黒目勝ちな大きな目を見開いた。 「私が、憐れんでいる?なるほど、そうかもしれぬ」
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