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陸人はベッドから起き上がり、女児のまわりをクルクル歩いた。
床と彼女の足の間を触ってみたり、吊るされている糸を探したりしたが見つからない。
「……お目にかかれて光栄だ座敷童さん」
「うむ、くるしゅうないぞ、物分かりの早いやつは好きだ」
「それで……座敷童さんは何で俺の前に現れてくれたの?」
「お前を助けるためだ、座敷童は人に幸福をもたらす存在だからね、いっちょ私の力を貸してやろうと思ったんだ」
「それは嬉しいね、じゃあ億万長者にしてくれ」
「無理だ」
「なんで?」
「人生を舐めるなよ、願っただけで夢が叶うほど私もこの世界も甘くはない」
「……じゃあどうやって俺を幸せにしてくれるんだ?」
「それはお前次第だよ、お前の頑張りの後押しをするのが私の役目なんだ」
「道徳の授業じゃないんだぜ?なんかほら……魔法か妖力かは知らんがパアッとやってくれよ、俺を金持ちにしてくれ!」
「だから無理だと言ってるだろう、お前が頑張るんだ、お前自身のやる気と活力で未来を掴むんだよ、それが筋だ……それをサポートするのが私の使命なんだよ」
「ケチくさ……」
陸人は起きて早々またベッドに潜り込んだ。
目を閉じて二度目の惰眠を貪ろうとする。
「おい寝るな!起きろ!お前みたいな良い大人が寝ても何も成長しないぞ!」
「成長はしなくてもいいことはある、現実を見ずに済むからね」
「若人が情けないぞ!起きて行動しろ!」
「若人って俺もう23だよ?人生もう詰んでるんだよ」
「ふざけるな!まだ23だろう!無限の可能性があるじゃないか!」
「日曜の朝の女児アニメみたいなセリフだな」
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