君と大人になる僕を

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「あぁ みいちゃん俺も食べたい」 ボートとしていると、かいが俺の横から手をあげる。 「もう かい君はさっき焼き鳥食べてたじゃん」 「えぇだって味違うじゃん」 そういってかいはみいちゃんの前で口を開ける。 かいはかわいい。 みんながわかってる。 でも胸が締め付けられる。 みいちゃんの瞳がかいだけをとらえてることが…。 さっきまで口に広がっていたケパブの味が、まったくわからない。 そう思った瞬間、そこから視線をそらした。 「行こうかける君」 大好きなみいちゃんの声でもう少し移動することを知る。 大きくシートを敷いて、みんなで座る。 そこで俺はまた違和感を感じてしまう。 いつもは、みいちゃん、俺、かいの順番なのに、 今日は、かい、みいちゃん、俺の順番だ。 今日はかいがわざわざ回り込んで、みいちゃんの隣に座った。 胸騒ぎがとまらない。 「?かい君座れる?私つめるね」 みいちゃんもちょっと不思議そうにしたけど、すんなり受け入れる。 なんで?かい…もしかして… みいちゃんがつめたせいで、俺とみいちゃんの体が触れ合う。 心臓が跳ねてしまう。 「あ ごめんね。かける君狭くない?」 「あ うん平気だよ みちゃんもっとこっちおいで」 いつもの余裕を見せようと努力する。 俺…もてるし。女子の扱いうまいし…。 「うん」 みいちゃんはいろいろ気にしてないようだ。 「ていうか、かいなんでそっち座ったんだよ、みいちゃん狭いじゃん」 と笑いながら言うとかいは、 「だってせっかくだから、みいちゃんの隣で見たいもん」 とあっさりと言ってのける。 “もん”って、まぁかいなら許される雰囲気ではある…。 「あれぇ もしや三角関係?」斜め後ろに座ってた、女子が聞いてきた。 「いやいや違うから、いつものかい君の“あまえた”だよ。」ね?とかいに同意を求めるみいちゃん。 「うん」と無邪気に笑うかい。 「いいなぁやまちゃん両手に華じゃん」 そんなやり取りに曖昧に笑うみいちゃんにも、違和感を感じてしまう。 でも、かいのおかげで、みいちゃんと密着している。 少し涼しい川風が吹いてきた。 俺はここぞとばかりに、 「みいちゃん寒くない?」 とみいちゃんにい近づく。 「あ うーん少し涼しいかも、」みいちゃんは顔をあげる。 絡み合う視線に、気持ちを込めてしまう。 「で でも二人に挟まれてるし、かける君あったかいから大丈夫だよ。」 照れてる? なんだか調子に乗ってしまう。 「そう?じゃもう少しくっついてるね」 みいちゃんからさわやかなかんきつの香りが俺の鼻をくすぐっていくほど、近づく。 もう抱きしめてしまいたい。 そう思った時、かいと目が合う。 今まで見たことないほど、強い視線だった。 俺はこの瞳を忘れない。 このとき、俺は“かいの本気”を引き出してしまったのかもしれない。 そして花火が揚がる。 「わぁ 近いね きれぇ」みいちゃんは俺のほうもかいのほうも見ずに、そう言って花火を見上げていた。
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