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「かけるぅ 部活終わったぁ?」
生徒会室を借りて、活動していた俺らの部活に凸してくるかい。
もう部活を引退したかいがこうやってノックもせずに生徒会室に入ってくるのは、もうルーティーンのようになっている。
「もう少しだよ待ってて、」
「おなかすいたぁ」
「彼女と飯行くんじゃなかったの?」
「…別れたよ。一昨日」
はぁ!?
「もうお前何やってるんだよ」
「お疲れ様」
このタイミングで、職員室に行っていたみいちゃんが帰ってきた。
「あ みいちゃん」
駆け寄るかい。
その光景を見ていた後輩がそっと俺に聞いた。
「矢間名先輩とかい先輩の関係って何なんですか?」
「なんだろうね?飼い主と犬?」
そう答えて、『俺が聞きたいくらいだ』と思ってしまう。
彼女作るくせに、みいちゃんに甘えてきて、すぐに彼女と別れる。
かいはこの一年これを繰り返している。
みいちゃんもそこには何にもツッコまない。
そんなみいちゃんは、後輩に陰口をたたかれていることもある。
『かい先輩も平尾先輩も従えていい御身分』って…。
3年間告白できないで、あいまいな関係に甘んじてきた俺にとっても、つらい陰口だ。
みいちゃんが、どんな気持ちでいるのかはわからない。
でも、かいのことを突き放すことはしない。いや、できないのかもしれない。
それは、母親というかお姉ちゃんのようにも見える。
誰もが知っている、『かいはかわいい』甘やかしたくなる存在だ。
言い方は悪いけど、女をとっかえひっかえしてる。
それでも、恨まれたりしない。
みいちゃんも、かいを軽蔑したりはしない。
でも、二人の距離が日に日に近ずいていく気がして、俺はちょっとした焦燥感にかられる。
それでも、みいちゃんのそばにいられるこの関係性を壊すことができない。
かいをうらやましく思う。
それは自然に、当たり前のようにみいちゃんに触れて、みいちゃんに触れてもらえる。
それは、ほかの人にも男女問わず、かいの役得なのかもしれない。
それでも思ってしまう…。俺はどれほどの気持ちを積み上げて、みいちゃんに触れているのかを。
「かける みいちゃんも一緒に帰ろ?」
屈託なく笑うかいに、思わず冷たくしてしまう。
「好きにしたらいいよ」
「やったぁー」
かいは素直に喜ぶ。
「私も一緒でいいの?」
俺の態度に何かを感じたであろうみいちゃんが、俺に耳打ちをする。
俺は力なく微笑む。
みいちゃん…俺は
俺はお前と二人きりがいいんだよ。
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