君と大人になる僕を

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ある日の放課後、仲のいい奴らとだべる。 もちろんその中には、かいとみいちゃんもいる。 こういう時は、当たり前のように、俺とみいちゃんは隣の席になる。 開けられた窓から風が入り、みいちゃんの髪を揺らす。 「あごめん、髪の毛」 俺のほうに髪の毛がたなびいていたことに気づいたみいちゃんが、そう言ってか髪の毛を束ねようとした。 反対の隣にいた女の子が、 「やまちゃんの髪さらさらぁ」と言って、みいちゃんの髪に触れる。 「ちょっと前にシャンプー変えたんだ」 髪にあってるみたい、と言ってみいちゃんが笑う。 すると 「えぇ俺も触ってみたい」 とかいが立ち上がった。 俺はドキッとする。 でも、かいの行動力はダンス仕込みで、素早くみいちゃんの髪に手が伸びてきた。 そして、さらっと触ってその髪を鼻に近づけ、 「いいにおい」と言ってにっこりする。 そのしぐさは、まるで王子様が髪にキスをするようなふんわりとしたもので、 周りもくぎ付けになるほど絵になる光景だった。 みいちゃんも動けなくなっている。 どうしよう。心臓が壊れそう。 つぎの瞬間、俺の前に座ってたやつが俺の顔を見て、慌てたように、 「おい、かい、変態かよ!」と笑った。 その一言で、周りのすべてが動き出す。 「女子のにおい嗅ぐとかマジやばいって」 と男子は茶化して笑っている。 「まぁ かいだからぎりぎりOKでしょ?」 と女子もフォローに入る。 いつもの空気感に戻っていく中、俺とみいちゃんだけが、時間の中に取り残されている。 「ごめんね、みいちゃん」 かいがみいちゃんの耳元でそっとささやくのが聞こえた。そのあと、 「えぇ!変態なのぉ?俺やばい?」 とみんなに向かって笑い飛ばす。 みいちゃんは— みいちゃんは顔を赤くして一瞬うつむいた。 確信に変わる。 俺のもやもやが、一気に真実味を帯びて、指先が冷たくなっていくのを感じる。 でも でも、かいの気持ちは? 俺はすがるように、みいちゃんが片思いである可能性にかけてしまう。 よく考えたら、みいちゃんが片思いだろうが、かいを思っているということは、俺に可能性が限りなくないということなのに、なぜか、両想いであることは避けたいと願ってしまった。 でも、その思いは、すぐに砕かれてとかされる。
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