君と大人になる僕を

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みいちゃんの気持ちに気づいてから少しして、かいが俺の家に遊びに来ていた。 かいが俺んちに入り浸っているのは珍しくない。 俺が漫画を読んでいて、かいはゲームの画面に集中している。 いつもの感じだ。 それは、唐突だった。 「ねぇ、かける」 かいがゲームから目をそらさないまま話しかける。 「あぁ?」 俺も漫画に目を落としたまま、答える。 「かける、なんで告白断ってるの?」 「え?」 突然の質問に思わずかいのほうを見る。 かいも一瞬俺のほうを見た後、またゲームに視線を戻す。 「俺、遠慮するのやめた」 またしても突然の展開。 「付き合いとか思いの長さとか、考えないことにした」 「なんだよ…」 いやな予感がせりあがってきて、かき消すようにぶっきらぼうになる。 「ごめん、友情は大事にしたいけど、かけるが無理なら」 途切れたゲームから視線を俺に移す。 「俺、友情はあきらめる。」 ダンスをしているときの表情。 かいが真剣なときに見せる顔だ。 思わず息をのむ。 「…なんのこt」とぼけようとした俺の言葉を素早くかいが遮る。 「みいちゃんのことだよ」 かいの強い言葉の後に、ゲームのBGMが流れる。 しばらくその音だけを聞いてしまう。 「かけるとぎくしゃくしたくないから、我慢してきたけど、俺もう無理だ」 かいはかわいい。 でも、今のかいは違う。 怖いくらい、まっすぐな視線が、俺とずっと交わっている。 あっという間にカラカラになっていく喉の奥から、何か言葉を紡ごうとするけど、 「…ど いうこ と…」 あほみたいな言葉しか出てこない。 「もう わかってるでしょ?かける」 そういうかいの顔は、男の俺から見ても— 男らしかった。
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