君と大人になる僕を

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「みいちゃん帰ろ」 俺たちの教室のドアから、かいが顔をのぞかせる。 ドアのすぐそばの席のみいちゃんは顔をあげてかいを見た。 「かいも頑張るねぇ、じゃあやまちゃんまた明日ね」 みいちゃんと一緒にいた女友達数人が、かいの肩をポンとたたきながらみいちゃんに手を振って、教室を出る。 にっこり笑ったかいと、キョトンとしているみいちゃん。 でもすぐに、俺のほうを向いて 「かける もう帰るよ」と誘ってくる。 提出があったので、職員室に行ってからと思いそう言おうとすると、 「みいちゃん 今日は二人で帰るの、俺と…みいちゃん」 とかいがみいちゃんの肩に両手を置く。 俺はドキッとした。 あんなにつやっぽい顔をしたかいを、俺は知らない。 すぐにみいちゃんを見る。 すると、みいちゃんも戸惑ったように、でもじっとかいを見つめている。 「ね?かけるはまだ用事あるみたいだし」 そういって、俺を見つめる視線は、完全なる威嚇でしかなかった。 圧倒された俺は 「あ あ うん」とうなずいた。 「…」 みいちゃんは、少しうつむいた。 「ココア飲んで帰ろ かける また明日ね」 かいはちょっと強引に思える態度で、みいちゃんを誘った。 みいちゃんはなんだか不安そうに俺を見た。 俺はとっさに柔らかく笑って、みいちゃんに近ずくと 頭をポンポンして、 「かいにおいしいココアおごってもらいな、また明日ね」と言った。 きっとみいちゃんは、好きな人と二人きりなのが不安なのだろう。 いつも俺が間に入っていたから。 そんなこともわかってしまう。 みいちゃんのことが好きだから…。 それに安心したのか、みいちゃんは 「うん またね」と笑って俺を見た。 俺は思う。 きっとこれが、俺が独占できる最後のみいちゃんの笑顔なんだなって…。 あぁ 俺何やってんだろ。 みいちゃん、俺結構イケメンよ?もてるし。みいちゃんのこといろいろわかってあげられるよ? でも、きっとみいちゃんにとって俺は、いいお兄さん、くらいのポジションかな。 そして、かいがなぜ、女子をとっかえひっかえしてたのかも、俺はわかっている。 きっと俺と同じ— あきらめようとして諦められないジレンマ。 俺は、みいちゃんだけを見つめることで、過ごした3年間。 かいは、ほかの人で埋めようとしてきた3年間。 みいちゃんは、俺の友達として、かいのいいおねぇさんとして過ごした3年間。 明日は、そのバランスは崩れてしまっているんだろうか? 「かける!今日は彼女いねぇの?」 絶妙なタイミングで、クラスメイトに声かけられる。 「彼女じゃねぇから」そう言って笑って見せる。 「まじで?まぁいいや、一緒に帰ろうぜ」 そういってくる友達に俺も 「おお」と答えて一緒に教室を後にする。
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