君と大人になる僕を

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俺が異変を感じたのは、2年の夏休みだった。 その日は、仲のいい奴らとファミレスでだべっていた。 窓の外を何気なく見た時— 見知った二人が並んで歩くのを見てしまった。 かいとみいちゃんだ。 他の奴らも気付いて、窓の外に向かって手を振り始めた。 するとかいも気付いて、何やらみいちゃんと会話した。 そして、あろうことか、みいちゃんの手を引いて、店内に入ってきた。 …! 「やまちゃん久しぶりー」 「かいげんき?」みんなそれぞれに声かけてる。 俺はみいちゃんの右手にくぎ付けになる。 もうかいの手とは離れている。けど、目が離せなかった。 ちらっと俺を見て、少し髪に手を当てて髪型を整える。 そのしぐさにも見入ってしまう。 「何?二人でいるなんて珍しくね?」 俺が聞きたいことを、友達が聞いている。 「え?もしかしてデートだった?」 心臓がぐっとなる。じっと二人を見つめてしまう。 「違う違う!そこであったの、俺部活帰りだし」 ね?とかいがみいちゃんを見る。 「うん 私図書館の帰りで、そこであったの。」 みいちゃんはちょっと照れたように、なぜか俺を見た。 「えぇなんだよぉ」 なおも茶化す友達。 「まぁ、そりゃそうか」 ふと一人が言う。 「やまちゃんには、かけるがいるもんな」 はぁ? 「ヤダ、私なんかじゃ翔君に悪いよ。」 え? 即答するみいちゃんにちょっと胸が痛む。 かいの時は、みいちゃんはすぐに反応しなかったのに… 「えーだってやまちゃんとかけるってなんかセットじゃん」 さらにけしかけてくる友達に、 「えーそーなのぉ 俺も翔と仲いいんだけどぉ」 とかいが口をとがらせる。 「あ そういやそっか」 とか言いながらみんな爆笑する。 なんだかちょっと笑えなくて、あいまいな感じになってしまう。 「それより俺も腹減ったぁ」 かいの一言で、いつもの感じに戻る。 みいちゃんも隣の女の子に渡されたメニューを見ている。 なぜかその日は、かいの隣に座るみいちゃんに胸騒ぎを覚えた。
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