君と大人になる僕を

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その日から、なんだかかいとみいちゃんは一緒にいることが増えた気がした。 夏休みの補習終わりに、何人かで話す。 さりげなくみいちゃんを隣に座らせる。 何のためらいもなく俺の隣に座るみいちゃんにほっとする。 「今日のシュシュいいね」 「そう?」たわいない会話を交わす。 友達の話題は花火大会のことだ。 「やまちゃんはやっぱ翔と二人で行くの?」 「えぇ私たちもかけると行きたい」 急に話を振られて慌てるみいちゃんがかわいい。 「私たちは特に約束してないよね?」 そんなみいちゃんの何気ない一言にもちょっと胸が痛んでしまう。 「あぁ まだ予定決めてないし」 「マジ?じゃみんなで行こうぜ」 その提案に何人かが賛成し、何人かは「カレカノ」と行くからと断った。 俺も、できればみいちゃんと二人きりで行きたい。 去年はみいちゃんは浴衣きてなかった。『苦手だし歩きにくいからみんなに迷惑かけたくない。』という理由だった。 二人きりなら、みいちゃんに合わせてあげられるから、浴衣も見れるのに…。 そんなことを考えていると、みいちゃんが 「いいねぇ 私たちも行きたい ね?」 と俺に同意を求めてきた。 “私たち” そのフレーズに一気に気分が浮上する。俺って単純だなぁ。 「あ あぁ うん行きたい。」 「じゃやまかけコンビは決定ね。」 “やまかけ”…って定食か!と思いつつ、 みいちゃんとひとくくりにされたことがうれしい。 その日の帰り、浮かれていた俺に鉄槌が落ちる。 「みいちゃぁぁん、かけるぅぅ!」 校門まで来た俺たちに校舎のほうから声がかかる。 かいだ。 「かい君」 みいちゃんが振り返って手を振る。 ちょっとイラっとする。 かいは走ってやってくる。 「俺も、一緒に帰る」 肩で息をしながらかいがほほ笑む。 「うん」みいちゃんがそういってほほ笑み返す。 何でだよ。俺は二人で帰りたいのに! 心の中ではそう叫ぶけど、彼氏でもない俺にはそんなことをいう権利はない。 当然のように、三人で歩き出す。 みいちゃん、俺、かいの順番で並ぶ。 「ねぇねぇ かける花火大会どうする?」 ふいにかいが聞いてきた。 おもわずみいちゃんを見る。みいちゃんは前を見たまま 「かける君と私はクラスのみんなと花火見に行くよ」と言った。とても嬉しそうなかおしてる。 「え?みいちゃんも一緒?いいなぁ」 いつものように甘え上手を発揮する聞き方だ 。 「浴衣着るの?浴衣?みいちゃんの浴衣見たぁーい」 かいはかわいい。 「あぁ 浴衣は着ないかなぁ」 「えぇなんで?」 甘えればほとんどの人がその目に揺さぶられて、受け入れてしまう。 「あ 歩くの大変だし、着慣れてないから」 「大丈夫ゆっくり歩くし、あっ!俺が手ぇつないであげる」 かいの瞳はまっすぐみいちゃんを射抜く。 … みいちゃんの視線が上下する あぁ みいちゃんも…かいに甘いんだよなぁ きっと揺れてる心。
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