君と大人になる僕を

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「ダメだ!」 耐えきれなくなった俺のここらの叫びが、つい口に出てしまう。 「え?」 突然大きな声を出した俺に、二人が驚いている。 あ…しまった。 「あ えと…ほら、みいちゃん困ってんじゃん」 どうしよう… 「かいにそんな言われたら、みいちゃん会に甘いんだから、断れないだろ」 焦っている、自分でも隠せていないのはわかっている。 「浴衣きて下駄はいてって結構大変なんだよ ね?」 必要以上によくしゃべって、あげくみいちゃんに同意を求めた。 ちょっと口を開いたまま、俺を見つめるみいちゃん。 ダメだ、みいちゃんを困らせてるのは…俺。 沈んでいく俺に、やっと我に返ったみいちゃんが、 「あ あ うん、前に下駄で足痛めちゃって、転んだことあって…」 それがほんとかどうかわからない。けどみいちゃんは、俺を浮き上がらせてくれた。 「そっかぁ トラウマ的な?残念」 かいは何事もなかったように、ちょっと拗ねて話を進めた。 「ごめんね、でも花火は一緒に行こうよ」 そういってかいの顔を覗き込むみいちゃんに,かいは 「うん!」と元気良くうなずいた。 「楽しみだね,かける」と俺にも話しかけてくる。 「あ あぁ」俺も笑顔を作ってみるけど、きっとうまく笑えてない…。 「じゃあね」 一駅はやく降りたかいに手を振って俺たちは電車の中で向き合う。 「さっきはありがと」みいちゃんがそっとつぶやく。 「あ いや、俺もごめん、浴衣きたかったんじゃない?」 気を遣わせたのかもと思って、そのことを詫びる。 実際、花火大会で浴衣きていくのって、女子にはステータスなんじゃ…。 かいは、手をつないでゆっくり歩いてあげるって言ったのに、 俺は、浴衣を着ることを否定してしまった。 「ううん お祭りはさ、いろいろ気にしないで、楽しみたいの。」 見上げられた顔は、いつものように柔らかく笑っていた。 「そう、ならよかった」 そういった後思わず本音が漏れてしまって慌てる。 「でもみいちゃんの浴衣見たかったな」 「え?」 「は!えと…いや、みいちゃんきっと似合うだろうなと思って!」 「えぇ…ほんとにそんなこと思ってる?」俺の焦りを気にすることなく、 みいちゃんは、いたずらっぽく笑う。 「いつか彼氏ができたら、そういうのもわるくないかな」 そう呟かれた、みいちゃんの気持ち。 少しほほを絡めている。 俺の心臓が早くなる。 それって…どういう意図があるの? うまい言葉が出てこない。 「なんてね」 みいちゃんは小悪魔だ。俺の気持ちは不用意にかき乱される。 「だいじょうぶ?」 どんな顔してたんだろ、みいちゃんが心配そうに声をかけてくる。 みいちゃんのせいなんだよ。そんなこと言えない。
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