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「ねぇ、もし僕が死にたいって言ったら、どうする?」
桜も散って、緑が増えるこの季節に、場違いの言葉が飛んでくる。
「悩みが、ありそうだね。」
少し驚いた顔をするのは、僕の幼馴染。大切な人だ。
こういう話は、幼馴染である彼女にしか出来ない。
「ん…。ちょっと、ね…。」
でも、結局話を濁してしまう自分がいる。
どうしてだろう。ちゃんと相談したいのに、本気で悩んでいるのに、どうして相談の一つも出来ないんだろう。
気が付くと僕のすぐ目の前に彼女の顔が来ていた。
「酷い顔をしているよ?」
確かに、顔が強張っているのに気が付く。指摘されるほど、思いつめた顔をしていたようだ。
しかし、それとは対照的に、美しく微笑する彼女――
本当に綺麗で、繊細で。僕の心を、揺れ動かす。
「悩みは、死んでしまえば消えると思われがちだけどね…」
憂いの表情で、春には元気に咲いていた桜の木を見上げる。
再び僕の顔を見つめて、放つ。
「新しく誰かに悩みを植え付ける行為にすぎないんだよ。」
本当に、彼女の言葉にはいつも驚かされる。
何年間一緒にいたかも分からないのに、これだけは慣れたことがない。
驚くし、納得できる。
彼女の言葉は、毎回僕に強い影響を残す。
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