矛盾を正すのは俺の仕事じゃない

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手首の捻挫は思ったより酷くはなく、痛みは1日で引いた。 アザは健在だし、大きく手首を動かせば痛むがペンや箸を持つ程度には支障がない。 良かった。利き手が使えないんじゃせっかく企画した流しそうめん大会がおじゃんになる所だった。 主催者の楽しめない企画なんて絶対やだ。俺参加したいし。 流しそうめんに必要な竹は実家に相談したら取り寄せてくれた。さらに業者まで呼んで組み立ててくれるとのこと。 優しい両親のいるお坊ちゃんで良かった。 「うぉー!すげえ!長ぇ!」 「本格的だね」 使用許可を得た体育館の端から端まで繋がった竹に集まったクラスメイトは歓喜の声を上げる。 「よく用意出来たな」 「俺の両親に不可能は無いから」 「さすが伊織パパママ」 竹には既に水が流れていて下流の方には桶が設置されている。 組み立てさえやってくれれば後は自分達でやると言ったのだが、俺の両親はそうめんを流してくれるアシスタントまで手配してくれていたようで。上流の方でスタンバイしている。 それと何人かの職人も用意したのか、体育館の壁際にテーブルが並べられ、そこで寿司やデザートなんかが並んでいる。 うーん、これはやりすぎでは?軽くパーティ仕様になっている。 「ほら伊織、お椀と箸持ってきた。あ、フォークの方が良かったか?」 「は?舐めんなし。箸でいい」 渡部が自分の分のついでに俺のも持ってきてくれて。 フォークは返却した。 流しそうめんのセットや立食コーナーに大興奮のクラスメイトに呼びかけて、竹の周りに並ぶ。 アシスタントに声を掛ければ、元気な掛け声と共に小分けにされたそうめんがいくつも竹の中を流れていく。 「取ったぁあああ!!」 「わぁ何これ楽しいっ」 「くっ…俺が狙ってた奴を…!」 「ねえ誰、トマト流した人!」 一般人ですら早々やる機会のない流しそうめん。初めての経験にみんな大興奮だった。 俺より上流にいる奴らが次々にそうめんを掴んでいき、漸く取れたそうめんをつゆに付けて食べる。ん、うまい。 普通のそうめんだけど、こうやって楽しく食べるってのが醍醐味であって。味なんかはどうでもいい。トマトや切り身を流してる奴いるけども。 俺はまだ胃の調整中なため、そこまで多く食べられない。 食べられる分だけのそうめんをお椀に入れて、流しそうめんの列から外れる事にした。 クラスメイトの中には既に立食コーナーへ移っている人もいるし。楽しくお喋りしている人もいる。 誰かから鋭い視線を向けられる事も無い。 みんな笑ってて、それぞれが思い思い楽しい時間を過ごしている。 うん、いいね。 こういう光景を側から見るのもいいし、輪の中に自分も入れて貰っているのもいい。 生徒会長になってから、ずっと胃がキリキリしていたから。 久しぶりに穏やかな気持ちになれている。 「七瀬、楽しんでる?」 「うん。清水こそどう?」 「意外と楽しいね。最初七瀬の提案聞いた時はびっくりしたけど、こういう行事があっても良いね」 そう言う清水の手にはスイーツがこんもりと乗った皿があった。 「それ全部食う気?」 「そうだけど。え?変かな俺」 「いや、変では無いと思うけど…」 清水は甘党らしい。俺は見てるだけで胃もたれしそうなのに。 清水は俺の隣に座って大量にあるスイーツをスピード重視で口に入れていく。 向こうでは渡部が流しそうめんを巡ってラグビー部とバトルしている。何してんだあいつ。  
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