ちょっと俺の野望聞いてくれない?

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ピンポーン… インターホンの音が鳴った。 本当に早かった。制服からスウェットに着替えるくらいの時間だった。 扉を開けると目の前に委員長が立っていた。 影山竜聖(カゲヤマ リュウセイ)、それがこの風紀委員長の名前だ。 表情筋が乏しいのかあまり笑わないけどそのポーカーフェイスが良いと囁かれる人物である。 顔が良くて俺より背も高いってさ、神は二物を与えないんじゃなかったのかよ…。 目線を上に上げると委員長と目が合った。 その真っ黒な瞳で冷たさを演出しているのか。 「なんだ?」 「別に。入って、お茶すら出せないけど」 これまじで。 1ヶ月近く部屋には寝に帰るだけの生活だったから買い物をしていない。水道水なら出せるが、さすがにそれは客人に失礼だよな。 ソファに座った委員長。俺はその斜め向かいにあるオットマンに腰を下ろした。 「体調はどうだ?」 「寝過ぎてちょっと頭痛いくらい。 色々迷惑かけた、ごめん」 「別にいい。…と言いたい所だがお前が倒れた時にやらかした事がある」 「は?」 「学園から届いたメール見てみろ」 言われた通りメールフォルダを開くと学園から2件メールが来ていた。 1件目は俺が全校生徒に送った生徒会室の防犯カメラの映像。 2件目は、あれ? これも生徒会室の映像だ。 1件目を送った数分後に送信されている。俺はこれを送った記憶がないし、しかもこの映像って消す予定だった部分を切り取った映像じゃ…。 「お前が倒れた時に共有か何かを選んでしまったんだろう。 運悪く全校生徒宛に添付されてしまっていた」 平然と答える委員長とは真逆に俺の顔は血の気が引いた。 携帯から流れるのは送ってしまった動画で。 丁度俺が泣いちゃってる部分が画素数高めに映っている。あ、委員長が生徒会室に来た。 「送信ボタン押したのは俺だけど」 「はあ!?」 「携帯を拾った時に押してしまったようだ」 「えぇ…えー…まじか」 何とも不運。運が良すぎて逆に怖い。 一般生徒からすると、俺が倒れてからすぐに動画が送られてきてって情報量多すぎだよな。 「生徒会についてなんだが、風紀委員であいつらをリコールした」 「ちょっと待て展開早くないか?」 「元々する予定だったんだ。先を越されてしまったがな。 全校生徒の投票により可否が決まる事になった。 今更あいつらが仕事をやり出したとしてももう遅いだろうな。 それくらいあの動画の反響が大きかった」 「そうなんだ。じゃあリコール決定したら生徒会メンバー決め直し?」 うわあ大変そう。 またランキングから決めるのか? そういやもうすぐ1年も含めたランキングが出るか。 「生徒会の役員については教師とも話してこちらで決める事にした」 「へー」 「2人候補がいる。1人は去年から留学している。中等部で生徒会に入っていたから実力に関しては申し分無いだろう。 もう1人は怪我で入院していた奴だ。3年だけど、留年したからお前と同じクラスにいる。 2人ともランキングに載った事があるしそれぞれ事情があって学校に来ていなかったが、もうすぐ帰って来ると連絡があった」 「へー」 「暫くは生徒会の仕事も風紀でいくらか請負う事にした。 引き継ぎ関連は前生徒会の先輩がやってくれると声がかかった。だが、先輩は受験も控えているしそこまで負担を掛けられない。 そこで、だ。七瀬、お前もう一度生徒会に戻れ」 「へー、嫌だ」 色々聞き流していたけど、最後のは聞き捨てならない。 無表情野郎に満面の笑みをぶつけてやれば盛大にため息を吐かれた。 「お前の身の潔白はお前自身が証明しただろ。つまりリコールされる正当な理由が無くなった訳だ。 会長の任も解かれていない。 そもそも理事長は本件の事を知らなかったようだ。出張で今年度は一度も学園に来ていないらしい」 「え?俺書類とか届けてたよ?」 「副理事長が代理で受理していた」 「なるほど」 じゃあ俺はまだ会長で、これからも会長って事か。 え、嫌なんだが。 あんな仕事漬けの毎日耐えられないんだが。 新しく役付が来てくれるんなら負担は減るんだろうけど、また性格の不一致とか起きたらどうすんだ。
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