ごめん、主人公俺だから

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「我々は生徒会長をリコールします」 講堂に響き渡った言葉に会場がざわめく。 全校生徒の視線が、講堂の隅に立つ俺に向いた。 マイクを持った副会長はメガネを中指で持ち上げ、淡々と理由を話し出す。 やれ、仕事しないだの、生徒会室で淫らな行為をしているだの、噂を事実かのように堂々と発表する副会長。 「既に会長以外の生徒会、そして理事長からも承認を得ています。よって、これは決定事項となります」 あらら、その辺はしっかりとこの学園の規則に則って手続きしたのか。 生徒会室に転入生を招き入れたりと規則違反をしていたのはそっちなのに。 つか、急に全校生徒招集かけんなよ。 こっちは締切間際の書類が漸く出来上がって先生に出そうとしていたのに。 俺の手には渡しそびれた書類の束がある。 かなり重要な物で、教頭の確認のあと、校長、副理事長、そして理事長へと書類が渡されていく程だ。 この書類を誰がやったと思ってんだ。 本来なら校長に渡す前に副会長にも確認してもらっているほどの書類だぞ。 お前が仕事しないからおかげでこっちは2度、3度と抜けが無いかチェックする羽目になったんだ。 ふざけんなよ。おい理事長、おめーも何リコール承認してんだ。 そもそもこの書類だっておめーがやれば済むもんじゃねえか。未成年にやらせるもんじゃないし、だから間に他の職員のチェックが入る事になって効率が悪いんだろ。ふざけんな、無能が。 とまあ、脳内で文句垂れていたら俺の名前が呼ばれ、マイクを渡される。 「謝罪ついでに挨拶でもしたらどうですか」 と冷たい視線を向けてきた副会長。クソが。 書類を持ったまま全校生徒の前に立つ。 生徒たちは生徒会長様が何を話し出すのか興味深々だ。 「あー……と、」 何話そうか。 「突然のリコール宣言。驚かせてしまい申し訳ございません。正直、僕も驚いています。 ですがもう決まったことはしょうがないですね。 ひとつ、生徒会の皆に言いたいのは…僕、僕は、」 予定が狂ってしまって正直焦っている。 本来ならばこの仕事地獄が落ち着いたら、色々な準備を経て俺が奴らをリコールしてやるつもりだったのに。 だが、これは好奇だ。 ラッキーなことこのうえない。 …そうだな、挨拶の前にまずはこの胸の内を明かしてやろう。 「ありがとう!!会長職辞められるなんてほんと、嬉しい!!!!」 どんな時だって感謝の気持ちを忘れずに。 これ、俺の第2モットー。 大きい声を出しすぎたせいで、マイクが音を拾いきれずにキーンとノイズが走る。 「いやー、本当にさ、面倒臭いんすわ生徒会の仕事。 ただでさえ忙しいのに、副会長も会計も書記も庶務も誰一人として仕事しねーし。 個人情報扱ってるのもあるから一般生徒立ち入り禁止だって言ってんのに転入生を生徒会室に連れ込むし。 仕事・仕事・仕事三昧で寝る暇ないしストレスで体調崩すしで。もう散々だったわけよ。 え?俺が仕事してないって?どの口が言ってんだコラ。 リコールは万歳、喜んで受ける。 けどな、俺はそれで静かに去るようなたちじゃねえんだわ。 変な噂はしっかりと根絶させるつもりだし、お前らクソを許すような生ぬるいこともしない。 第1モットーは“やられたら倍返し、フルボッコ”だ」 唖然とする生徒会に向かってにっこりと笑う。 ごめんな、素はこっちなんだわ。 隠してたっつーか、生徒会では仕事という括りで見ていたから他所行きの態度になるのは当たり前じゃん? 生徒会が無かったら今頃俺は部活に入って走り回る至って普通な男子高校生だった訳なんだわ。 え?金持ち坊ちゃんなのに?って? いや金持ちだからって偏った性格になるなんて稀だからな。 俺様キャラとかどう育てたらそうなるんだよ。 しかもこちとら実家が金持ちってだけで、別に俺自身財産なんてそんなねーもん。 毎月の小遣いは1万円だ。 バイトが出来る高校に入っていたら5千円だったんだぞ。
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