820人が本棚に入れています
本棚に追加
生徒会と同じく唖然とする一般生徒に向き直り、手に持っていた書類を掲げる。
「何だかここ最近、生徒会と転入生の話題で皆さんにはあらぬ混乱を招いてしまい申し訳ございませんでした。
学園全体を招いてしまったこと、深く反省しております。
しかしながら、それは一体誰の責任かと問いたときに、生徒代表である生徒会長だと声を上げる人がいようものならば、俺はそれは違うと声を大にして言います。
何故ならば、俺は与えられた仕事をきっちりとこなしていなからです。
その証拠がこの書類。
本来ならば他の役付もすべき仕事をこの俺!
1人が!全て担ってやっておりました。
噂を信じている人も少なからずいるでしょう。
そんな人たちに聞きます。
俺以外の生徒会メンバーは仕事をしていたと思いますか?
思い出して下さい。朝は転入生と登校し、昼は転入生とカフェテリアで食事し、授業終了時間と同時に校門を潜って寮へと帰る。そんな姿を見ませんでしたか?
授業免除という特権を使って生徒会室に転入生と共に入り浸り、何をしていたと思いますか?
ええ、パーティーですよ。お菓子やらゲームやら持ち込んでずぅっと喋ってんですよ。
生徒会には監視カメラがありますからね、あとでそのデータを全校生徒に配りますのでご確認下さい。
1人机に向かって作業する生徒会長の姿もあるので」
なんなら今送るか。
ポケットから取り出したケータイを操作する。
少しすると講堂のあちらこちらから着信音が聞こえた。
おい、マナーモードしとけよ。
学校から全校生徒への周知事項などはメールを使って行われる。
それは生徒会も利用出来る。
動画添付して下書き保存しといて良かったわ。
何週間もある動画を切り取りして編集すんの大変だったわ。この学園はしょう害を持つ人も通っているからちゃんと字幕付きにしてやったんだぞ。
「おい!さっきから黙って聞いてやれば、何デタラメ言ってんだ!」
マイクよりもでかい声で壇上に上がってきたコイツ、そうマリモ。
あ、間違えた転入生だ。
ずかずかと歩み寄って来るが無視だ無視。
「おい無視すんなよ!無視はいけないんだぞ!」
うるせえわこいつ。
「えー、個人的な話になりますが。
僕から親衛隊の皆さんへ。
ここ数週間、よく耐えてくれました。
行き場の無い思いが沢山あったことだと思います。本来ならばそう言ったのは親衛隊付きの僕含め生徒会メンバーが受け止めるべきだったけど、忙しさを理由に何もしてやれなくて申し訳ない」
講堂にいる生徒にむかって頭を下げる。
生徒会長=俺様キャラなんて方程式知らないし。
「…中には、どうしようも無くて鬱憤をぶつけてしまった人もいるかもしれない。
対処しきれなかった俺の責任でもあるが、そういった行為はいかなるものでも犯罪になるってことは理解してほしい。
未成年だから許される訳ではないんだ、未成年だから守られているだけであってその罪は消えない。だから今後はそういったことをしないで欲しい」
未成年だから守られるなんて時代は終わりに近づいてきているからな。
これを機に学んでほしい。
「おい!無視するなって!」
ああ、まだいたのか転入生。
俺の肩を掴んで無理やり自分と視線を合わせようとするコイツ。
何気力強いし、肩が痛い。
「何か?」
「仕事をしてないのはお前だろ!?生徒会室にもいないし!」
「仕事が出来る状況じゃなかったから別室でやっていただけだ。さっき書類も見せたでしょう?」
「嘘だ!だってみんなが仕事してないって!
生徒会室でやっ、やらしいことしてるって…!」
「………ん?逆に聞くけども、生徒会の奴らが一日中お前にべったりだった間、彼らが仕事をしている姿を見たことがあるの?
それに生徒会にお前が一日中入り浸っているのにどうやって生徒会室でおせっせしろと?」
てめーの脳みそ空っぽなのかよ、あん?
「お前っ…!俺のこと好きだからってツンツンすんのもいい加減にしろよ!」
「………」
「生徒会室に来ないのも俺がいて恥ずかしいからなんだろ!?そうなんだろ!?」
「おいおいおいおい、待て待て、待てコラ、
何だこいつダル…、」
話ぶっ飛びすぎだろーが。
わーわーぎゃーぎゃ騒ぐ転入生にうんざりしていると、舞台袖にいた風紀委員会の委員長と目が合った。
前まではそんな関わりのなかった風紀だが、ここ数週間で随分と距離が縮まった。
これに関しては転入生のお陰だな。
最初のコメントを投稿しよう!