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風紀が転入生を半ば強引に連れて行ってくれたお陰で漸く静かになった。
「…はい。今の見て分かる通り、彼には話が通じません。
ということはこちらが何を言っても改善の余地は見込めないと言うことです。
だから暴力に走る…なんてことは決して辞めてください。
これは彼を庇っている訳ではありません。
宇宙人とかゾンビとかがいたとするでしょ?それに自分から近づこうとする人なんていないでしょ?
ああ、例えが悪いかな…?
えーっと、虫って子供の頃は平気なのに大人になると苦手になるでしょ?それって、僕らが自我を持ち始めた時に、意思疎通の出来ない虫に対して恐怖を覚えるからなんだよ。Gとか良い例でしょ。何言っても言うこと聞かないしいきなり飛ぶし、怖いじゃん?
あ、虫平気な人もいる?じゃあさ、
街中で刃物振りまわしている人がいるとするじゃん。
『そういうのはいけないんだぞ!』って近づく人いるかな?いないよね。警察に任せるよね。警察が来るまでの間逃げて距離取るよね。変な奴には関わらない方がいいって思うよね。
つまりそういうこと。
関わらないのが1番だってこと」
え?回りくどいって?いいじゃん別に。
こういう風に言ったほうが、いかに俺が転入生に興味無いかって伝わるじゃん。
「関わりたくないのに無理やり振り回されている人もいるかもしれない。
そう言う時はさ、周りの子たちが助けてあげよう?
迷惑してるかどうかなんて本人しか分からないんだから一度話を聞いてあげよう?勝手な憶測で物事を決めるのは止めよう?」
うん。自分で言っててなんだけど、何だこの時間。
道徳の授業か?人としてあるべき姿なんて小学校で履修済みだろ。
長く話しすぎたな。
そういえば、と不意に思い出して舞台袖にいる生徒会メンバーを見ると、揃いも揃って俯いている。
…今更、俺らの関係を戻そうなんて微塵も思っていないけど。これを機に分かってくれたら少しは見直すかな。
次に視線を正面に戻した。
1人の生徒が俺の方をじっと見つめて泣いている。視力はいいんだ。
よく見ると、泣いている生徒は転入生とよく一緒にいた爽やか君だった。この状況で泣いているということは、彼にもこれまでに何か思う事があったのだろう。
「僕からは以上です。みんなの前に立つのはこれが最後だと思います。今までありがとうございました。
生徒会長では無くなった僕ですが、今後は穏やかで楽しい学園生活を送りたいと思いますので皆さん、どうぞよろしくお願いします」
友達出来るといいな。転入生みたいに会った瞬間から「俺たち友達だろ!」なんて事は言わないけど。
みんなと友達になりたい願望はある。
目指せ友達100人。
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