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「いいえ。帽子屋じゃないですね」
歯の辺りからキラッ、という効果音が聞こえてきそうなほど、朗らかな笑顔を向けられた。嫌な奴ではないようだが、ヴォイチェフに騙されたせいでアランから見た第一印象は最悪である。
「そ、そうですか。で、何用でこちらへ?」
「もっちろん! 魔王討伐の為、私と一緒に冒険をし……」
「お引き取り下さい!」
ばたん!
アランは戦士の正面に座りもせず、次の瞬間には退室していた。
今までも来客は少なくなかったが、大抵は城からの使いであったり、両親だったりした。もちろん、彼らは口をそろえて「旅立て」と言ってくる。もちろんアランの回答はノーだ。
そこで周りも一計を講じたらしい。こういった人物がアランを訪ねてくるという事は今までなかった。国王陛下か大臣閣下辺りが国中に勇者の仲間募集中という御触れでも出したのかもしれない。
アランにとっては傍迷惑な話だ。
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