第1旅

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「おはようございます! アラン殿! 今日も良い天気ですなぁ!」  真っ暗だったはずの寝室に、太陽の光が強制的に差し込まれた。  カーテンを開け、さらには窓までもガバッと解放したのは、ここ一年で誰よりもアランが耳にしているであろう聞き慣れた声だった。  齢七十を超え、しわがれて細くなった体躯とは相反して野太く、生気に満ち溢れたその大音声。一年前に国王陛下から専属で『付けて頂いた』執事のヴォイチェフのものだ。  ヴォイチェフは真っ黒な執事服の胸の辺りに手を当て、恭しくお辞儀をした。だが、それはアランの目には映らない。布団から出ようとしないからだ。  ぴくり、とヴォイチェフのこめかみに僅かな動きがあった。 「アラン殿!」 「……まだ眠いので」  ここ一年、ほぼ毎日のように繰り返されてきた問答だ。  布団から出たくない勇者と、それを叩き起こす執事。これが、この屋敷の日常であった。
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