第1旅

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 その後、アレックスは妻を娶り、一人の息子を生んだ。もちろん、勇者の血を継ぐその子は素質にも恵まれ、立派な聖職者、後に聖戦士であるパラディンとなった。しかし、勇者の器ではなかった。  不思議なもので、絶大な力を持つ『勇者』は百年に一度しか生まれないとされ、たとえ実子であってもそうはならないのだという。確かにアレックスの息子は非常に優秀な人物ではあったが、魔族を根絶やしにできるかと問われればそこまでの傑物ではなかった。  そして、時代は進んでその息子も子供をさずかる。晩年での結婚だったのは、勇者の血を絶やすなという周囲の意見からやむを得ずといった気持ちだったのかもしれない。元は聖職者だったことも大いに関係しているだろう。  その子供が現在、勇者と言われるアレンの母親に当たる人物だ。名はアリエル。彼女もまた戦いの才能に恵まれ、槍術では達人の域にまで達している。  しかし、彼女も自身の父親と同じく一騎当千の勇者ではなかった。かなりの実力があることは確かなのだが、誰よりも彼女自身が勇者でないことに打ちひしがれていたことだろう。  さらに時は流れ、アリエルは恋に落ちる。それがアレンの父であり、街で刀鍛冶を営んでいるミハイルだった。  勇者の血統の名家であるアリエルはいつしか彼を婿に取り、アランが生まれたというわけだ。
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