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アランは生まれながらにして勇者だった。別に勇者である証などは存在しないのだが、幼少期の時点で格が違うと、母親であるアリエル自身がすぐに気づいた。
四歳の頃には魔術を見せれば即座に復唱し、少年期になってからは剣術の腕前もめきめきと成長。師範役であった王宮の戦士長を打ち負かすほどの実力をつけた。
さらに、彼女にとっての祖父、アランにとっての曽祖父であるアレックスの時代から数えるとちょうど百年の月日が経っていることで誰もが確信する。
アランこそ勇者である、と。
ただ、本人にはまったくもってその気がない。魔術も一度唱えてしまえば日常生活でちょっとした火を使う以外では滅多に使うこともなく、剣術の指南も戦士長を倒してからはサボってばかりだった。
母親であるアリエル本人が槍の稽古をつけたこともあったが、これにも勝利してからというものの、何かと理由をつけて逃げ続けている。
何度も無理やり付き合わされそうになったが、隙を見て脱走。脚も異常に速いせいで誰にも捕まえられないという傍若無人っぷりだ。
単純にアランが面倒くさがりな性格であるというのもあるが、彼には一つの大きな弱点があった。
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