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「ほほっ、ようやく起きておいでですな、アラン殿。おはようございます」
「また寝るだけさ。爺、殺生は避けるように」
「そうはいきません。ほれ、早う起きなされ。客人が待っておいでですぞ」
朝っぱらから客人とは、と思いつつも渋々寝間着から平服へと着替えるアラン。頼んでもいないのに、ヴォイチェフは脱着衣を手伝ってくれた。この辺りはさすが執事というところか。
姿見に映るのは黒字のスラックスに白いボタンシャツ、サスペンダーをつけた美男だ。
太った男がベルトの代わりにサスペンダーを使用するイメージが強いが、男前にはこんな一般からは少々外れたセンスでもかっちりと決まるものだから不思議なものだ。
「よくお似合いです」
「ありがとう。それで、来客と言うのは?」
「街の仕立て屋です。アラン殿が帽子を頼んでおいでだったとかで」
はて、と首を捻るアラン。城下町には度々出向くが、帽子など頼んだだろうか。思い出せない。
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