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警察と、カード会社に連絡した。
全部、全部、ママがやってくれた。
私はどうしたらいいか分からなかった。
ただただ不安な気持ちで、ママがあちこちに電話するのを見ていた。
怖かった。全部怖かった。
無理やり連れ去られそうになったことも、知らないカード明細も、全部吐きそうになるほど怖かった。
一段落ついたママは、ソファに座る私の方を見る。
「…今回のことはパパにも言うからね。いいね。」
当然だ。
こんなことになって、パパに叱られないわけがない。
***
「美嘉、座りなさい。」
怒鳴られると思ってたのに、パパは怒鳴らなかった。
パパはソファに座ると、私にも座ることを促して、それから重苦しい雰囲気で口を開く。
「美嘉。
大人になるっていうのは、責任を伴うんだ。」
「…はい。」
責任、とは。
私には、まだその実感がない。
親と一緒に暮らしてて、高校に通ってて、親が、先生が、大人が守ってくれるのが当然の状態。
そんな中で、大人の“楽しいトコロ”だけをつまみ食いして、いい気分になっていた。
パパは自らの感情を抑えるようにして、ゆっくりと言葉を選んで発する。
「今日はママがやってくれたけど、本来警察への連絡もカード会社への連絡も、全部美嘉がしないといけないことだ。
なぜなら美嘉はもう成人していて、全部自分の意志で契約した。
美嘉、いいか。美味しいところだけ享受して、面倒なことや、怖いことは親に任せるっていうのは、それは大人じゃない。
もちろん、パパとママは美嘉が困ってたら助けたいし、なんとかしてあげたい。
でも、」
パパは私の背中を撫でた。
「親はいつでも助けられるわけじゃない。パパやママのいないところで美嘉が危ない目にあっても、助けることはできない。
でも悪い大人は、まだ何も分からない美嘉たちを狙ってつけ込んでくる。それは分かるか。」
わ、かる。
否、わからされた。
『悪い大人はね、君たちのこと、ヨダレ垂らして待ってたから。』
今日の男の言葉が、私の頭の中で反芻される。
つい最近までは18歳でも未成年の扱いだった。そんなお子様が、いきなり「成人です」なんてなったら、良いカモにされるに決まってる。
だって、中身は実質コドモなんだから。
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