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「ねぇ美嘉、FXとか興味ない?」
明くる日、有理沙がFXを勧めてきた。
その顔は、なんかちょっと疲れている。
「FXって…外国為替取引のこと?」
「そうなの!少ない資金ですごい儲けが出るらしくて、自動販売ソフトでやるんだけど…それでね、私その勉強会みたいなのに参加して、お友達紹介したら、私とそのお友達に謝礼金払ってくれるって言ってて…」
それ…マルチ商法では?
「為替とか怖いから、私はやらないかな。」
私ははっきりと断った。
すると亜理沙があからさまに落胆した顔をする。
「…そう?」
「ねぇ、亜理沙。」
亜理沙の目を見て、私は口を開いた。
「最近、亜理沙元気ないね。
困ってることがあるなら相談して?
…少しは役に立てるかもしれない。」
最後に私を守ることが出来るのは、私自身。
私にしかできないこと。
それは亜理沙も、
これから成人するみんなも同じ。
まだ“大人の責任”っていうものを理解したとは言えないけれど、それでも少しずつ、自覚をもっていきたいと思う。
それが、自分のためになるから。
(Fin)
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