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私の優しい恋人の話
「そーゆー所が好きなんだよ」
きっと、誰にも向けたことがないようなうっとりとした顔をしていたと思う。
貴方が、私に自分は相応しくないと思ってることを知っている。私の隣で自信がもてないことも知ってる。
貴方は確かに頭がいいわけでも、お金があるわけでも無い。特別顔がいいわけでもないわ。でも、それでも、私にとっては優しい人よ。ねぇ、私が気づいてないと思ってるんでしょう?
私が告白を断るときのたった一言。あれで本当に納得してくれる人はいない。今まで告白を断るたびにストーカー被害に遭ってきた。それは優しく断ろうが冷たく断ろうが変わらない。だから私は必要以上のことを言わない。だって無駄だから。
ただの盗撮だとか職場前で出待ちされるだとかならまだマシな方で、お金持ちなんかはタチが悪く権力を使う。金を、周りの人を使う。
うんざりしていた。私は好きで好かれてるわけじゃないのに、どうして想いに答えてくれないと嘆く男共に被害者ヅラされなきゃいけないの?
でも、彼と付き合ってから。否、正確には彼が私を好きになってくれてから迷惑なストーカーは消えた。
彼が消した。
なんでも知ってるのよ、貴方のしてくれたことなら。貴方は私以外に優しくなんてない。本当に残酷で、無慈悲な人ね。
今日のお坊ちゃんだって、私を忘れられなくて使用人かだれかに調べさせるでしょうね。
でももう心配ないわ。私には彼がいるもの。
私を幸せにしたい人ではなく、私に幸せになって欲しい人。私の理想の人。愛は押し付けられるものだと思っていたのに、彼は違う形の愛を教えてくれた。
だって、私の側に居たいと思わないなんて言われたの初めてよ。誰もが私のそばを望む中貴方だけが私の隣を放棄する。
優しいだけじゃ愛せない。誠実さなんていらないの。あなたのその、静かで確かな愛が欲しい。
ねぇ、貴方は知らないでしょうけど、大好きなのよ。なんて、そんなことを言ったら調子に乗ってしまうかしら?
いつか貴方の愛が独りよがりになってしまう日が来たのならこの恋はきっと冷めてしまうから、確かに今ある私の愛を伝えることを躊躇ってしまう。
居心地のいいこの愛にいつまでも浸っていたいの。あなたの世界が私中心である今のまま、時を止めてしまえたらどんなに幸せだろう。
こんなことを言ってしまえばあなたは喜んで私と永遠になってくれる。でも、それも勿体無いと思ってしまう。だってそしたら私のために動いてくれる彼を見れなくなってしまうから。終わらせたいのに終わらせたくないの。私はどうすればいいんだろう?
今日も私のためにお掃除してくれる私の優しい恋人さん。求められるのを嫌がった私が1番欲しがりなことも貴方が教えてくれたのよ。
だから最後まで責任とってね。
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