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過去 (回想)
彼との出会いは唐突だった。
いつものように、音楽室でピアノを弾いていた時だった。私の奏でる音だけで包まれた音楽室のドアが開き、雑音が混じった。異変を感じた私が演奏を止めると、彼は声をかけてきた。
『わぁ、すいません。とっても素敵だなと思ってドア開けちゃって。まさか、一ノ瀬音華先輩だとは思わなくて、、、』
嘘だ。この音楽室は、私が先生に許可を取り、他の生徒にも邪魔が入らないように伝えてもらっている。じゃあ、わざとなのか。または、転校生なのだろうか。
『ここは、今の時間私以外の人間は、入室禁止よ。知らないの?』
『えへへ。知ってましたけど、どうしても見てみたくて。こっそり入ろうと思ったけど、やっぱり一ノ瀬先輩にはわかっちゃいますよね。』
知っててこの部屋に入ってきた人は初めてだった。あの時は、物珍しさと気が紛れてしまったので、少し話すことにした。
『怒ってます?』
と彼は上目遣いで聞いてきた。
『いいえ。ちょっと気が散っちゃった。あなたの話を聞かせて?何年?名前は?』
『二個下の1年、早乙女 翔命って言います。
かけるにいのちでカナメって言います。よろしくお願いします!ずっと、前から音華先輩のピアノのファンなんです。』
よろしくお願いしますなんて、以後も何かあるみたいに言うから、疑問に思ったのをよく覚えてる。
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