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「お、ミーコじゃん」
「ミーコ?」
ノックをして控室に入ると、恵麻ちゃんにベースメイクを施していた坂崎さんが私の姿を認め、にやりと口角を持ち上げた。
……うん、さっき少し様子が変だったような気がしたけれど、あれはきっと気のせいだな。
「コホンっ!dearncyのあ、い、は、ら、です!恵麻ちゃん、改めまして、今日は宜しくお願いします」
主に坂崎さんに向かって"相原"を強調し鏡越しに挨拶をすれば、坂崎さんがふは、と小さく吹き出した。
「これ、Mrs.サンドのたまごサンド、良かったら食べて下さいね」
それをじとりと見やりながら、鏡の前のテーブルにたまごサンドとドリンクを置く。
「相原さん、こちらこそ宜しくお願いします!わー、私ここのたまごサンド、大好きなんです」
「ふっふっふ。実は恵麻ちゃんのSNSでリサーチ済みでした。そして私も大好きです」
坂崎さんから恵麻ちゃんにパッと視線を移し私がにやっと笑って見せれば、
「あはは!嬉しい、ありがとうございます!有り難くいただきますね」
恵麻ちゃんはふわりと花が咲くように顔を綻ばせた。なんて可愛い……。
「へー、そのたまごサンドってそんな美味いの?」
すると恵麻ちゃんの斜め前に立ち、私たちが喋っている間にも着々とメイクを進めていく坂崎さんが、ちらっと私へ視線を向けて小首を傾げる。
「え、竜さん食べたことないんですか⁉︎もうめちゃうまですよ!ね、相原さん!」
ぴくり。僅かに肩が揺れた。なぜなら彼女の少し甘めのソプラノの声が、彼を"竜さん"と呼んだから。
「………あっ、うっ、うん!私的にはポテトサラダサンドもおすすめですけどねっ」
だから、同意するのが一瞬遅れてしまう。
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