真夜中文芸部には闇がある

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 林さんはパソコンにへばりついたまま、ふっと鼻で笑った。 「はあーあ、山内さんって成績いいのに頭悪いわね。ハウスしなさいって言うけど、ハウスは副詞だから使い方合ってないわよ!」 「ハウスは名詞」  鋭いツッコミを喰らった林さんは、振り向くことなく首をひねる。 「え、何? 林さんが美しいですって?」 「林さん、明日は朝一番で耳鼻科に行きなさい。早期症状は治りやすいわ。今ならまだ間に合うかもしれない」 「え、何? 林さん可愛い天使ですって? やダモう照れチゃウ」  後半部分は棒読みで言ったつもりなのだろうが、残念なことに林さんは棒読み下手ランキング全国大会第一位だ。 「…………ボケよね? 本気じゃないと信じていいのよね?」 「山内さんったら何言ってるの、ボケに決まってるでしょ。山内さんに可愛いとか美しいとか言われて照れるわけないじゃない……あれ? 山内さん急に静かになった」  林さんがあまりにもズレすぎているから呆れて言葉が出ないだけなのだが、林さんはそれに気づかない。  ため息をつき、きっぱりと言う山内さん。 「私、嫌いな人間と同じ空気を吸うのが嫌なタイプなの。この部屋の酸素をなるべく使わないように、これからは極力口を閉じてるわ」  林さんが心の底から驚いた顔で、突然盛大に拍手した。 「へぇ~山内さん酸素とか知ってるんだ! すごいねびっくり。偉い偉~い!」 「家庭科室に行ってきてもいいかしら? 包丁取りに行きたいんだけど」  二人の会話は大抵いつもこんな感じである。
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