episode 01 悪魔の覚醒

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「夕立……?」  つぶやいたのも束の間。 ドロドロとした黒く分厚い雲が頭上に現れるや、稲光と同時に卵の殻のごとく真っ二つに割れた。 「か、雷が来る。逃げな……キャー!」  ドーーーン!  盛大なドラの音のような響きが、地面に屈んだ彩女の頭上で鳴った。 * ━━どれくらいの間、気を失っていたのだろう。  薄ぼんやりと視界が開けてくると同時に、彩女の瞳に黒髪の美青年が写りこんだ。 「お姉様、気がつかれましたか?」 「お姉様!?」  思いもよらない呼びかけに、冷水を浴びせられたかのように飛び起きる。  一人っ子として育った彩女に、弟は存在しない。ましてや金回りのよくない年下の男と関わることなど、二十四年の生涯において一度たりとも覚えがなかった。 「アイリスお姉様ではないのですか? 心配して僕を追いかけて来られたのかと……」 「アイリスって。確かに苗字は大山(オーヤマ)だけどさ。私は彩女。誰と勘違いしているのかしらないけど……」  意味不明な会話を繰り広げる中、彩女は不思議な青年の奇抜なファッションに目を奪われた。
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