episode 01 悪魔の覚醒

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「ひ、彦一さん!?」  ドス黒い空気をまとった小太りな男は、数時間前に別れたばかりの彦一だった 「こんなところで、若い男とイチャついて。そいつが本命の彼? 結局君も、お金より容姿(ビジュアル)重視なんだね」 「彦一さん、違うの。彼は……」 「心配してタクシー代まで渡した僕は、まるでピエロだよ」 ━━たった、千円ポッキリだけどな。  毒を吐きたい衝動を堪え、彩女は愁傷な態度を見せる。 「ありがとう、彦一さん。感謝してるわ。まさかとは思うけど、病院に問い合せたりは……」  つぶらな瞳を三角に釣り上げ、彦一は叫んだ。 「身内を装って電凸したよ。そうしたら『そのような女性は、当院には搬送されておりません』って!」 「怖っ。行動力、怖っ」 ━━やべっ。本音が……。  慌てて口を抑えるも、後の祭り。 「怖いのはお前だ、この性悪女!」  ジャケットの内ポケットに腕を差し入れた彦一が取り出した物は、バタフライナイフだった。 「くらえ、天誅!」 「何で、そんなもの持ち歩いてんの!?」 「護身用だ。けど今は、お前のような性悪女を成敗するためにレディゴー!」 「意味わからん!」
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