5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひ、彦一さん!?」
ドス黒い空気をまとった小太りな男は、数時間前に別れたばかりの彦一だった
「こんなところで、若い男とイチャついて。そいつが本命の彼? 結局君も、お金より容姿重視なんだね」
「彦一さん、違うの。彼は……」
「心配してタクシー代まで渡した僕は、まるでピエロだよ」
━━たった、千円ポッキリだけどな。
毒を吐きたい衝動を堪え、彩女は愁傷な態度を見せる。
「ありがとう、彦一さん。感謝してるわ。まさかとは思うけど、病院に問い合せたりは……」
つぶらな瞳を三角に釣り上げ、彦一は叫んだ。
「身内を装って電凸したよ。そうしたら『そのような女性は、当院には搬送されておりません』って!」
「怖っ。行動力、怖っ」
━━やべっ。本音が……。
慌てて口を抑えるも、後の祭り。
「怖いのはお前だ、この性悪女!」
ジャケットの内ポケットに腕を差し入れた彦一が取り出した物は、バタフライナイフだった。
「くらえ、天誅!」
「何で、そんなもの持ち歩いてんの!?」
「護身用だ。けど今は、お前のような性悪女を成敗するためにレディゴー!」
「意味わからん!」
最初のコメントを投稿しよう!