prologue

2/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「お父様、お父様!」  金髪(ブロンド)の美女が、白目を剥かんばかりの形相でヒステリックに騒ぐ。 「なんだ、アイリス。麗しくも、いつも以上に恐ろしい顔をして」  ベルベット生地の重いマントをひるがえし、白髪ロングヘアの初老男が振り返る。頭頂部に剣のような一角を備えたこの男こそ、歴代一残忍と謳われる悪魔界第365代大魔王・アコニートゥムだ。 「聞いてください、お父様。ジュネスったら、私が生け捕りにして甚振(いたぶ)ろうとしたロータスの妖精を……逃がしてしまったのです!」  アイリスと呼ばれた娘の両側頭部には、金髪の隙間から生え立ちのタケノコような角が二つ。それは作り物でもコスプレのカチューシャでもなく、しっかりと頭皮から伸びていた。 「相変わらず悪魔の娘に相応しい遊びをしているのだな、お前は。それに引き換え、ジュネスときたら……」  アイリスの背後では、一人の青年が震えながら咽び泣く。 「だって、だって……」 「泣くな、ジュネス。ハッキリと説明しろ!」 「だって、お姉様ったら……罪のない妖精の腕を引きちぎろうとするんだもの。残酷で、可哀想で……」
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!