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「お父様、お父様!」
金髪の美女が、白目を剥かんばかりの形相でヒステリックに騒ぐ。
「なんだ、アイリス。麗しくも、いつも以上に恐ろしい顔をして」
ベルベット生地の重いマントをひるがえし、白髪ロングヘアの初老男が振り返る。頭頂部に剣のような一角を備えたこの男こそ、歴代一残忍と謳われる悪魔界第365代大魔王・アコニートゥムだ。
「聞いてください、お父様。ジュネスったら、私が生け捕りにして甚振ろうとしたロータスの妖精を……逃がしてしまったのです!」
アイリスと呼ばれた娘の両側頭部には、金髪の隙間から生え立ちのタケノコような角が二つ。それは作り物でもコスプレのカチューシャでもなく、しっかりと頭皮から伸びていた。
「相変わらず悪魔の娘に相応しい遊びをしているのだな、お前は。それに引き換え、ジュネスときたら……」
アイリスの背後では、一人の青年が震えながら咽び泣く。
「だって、だって……」
「泣くな、ジュネス。ハッキリと説明しろ!」
「だって、お姉様ったら……罪のない妖精の腕を引きちぎろうとするんだもの。残酷で、可哀想で……」
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