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「問答無用。人間界へ飛べ!」
ジュネスを囲んで、轟音と共に盛大な竜巻が起きる。重厚な仕立てであるはずの宮殿内の調度品が、ハリボテのようにガタガタと揺れた。
「お許しください、お父様!」
命令を突きつけたアコニートゥム自身も、へっぴり腰で王座にしがみつき首を振る。
「怖いよ。助けて、お姉様!」
柱を抱えて見守るアイリスに訴えるも、まるで犬を追い払うようにシッシと手を振られた。
「お父様! お姉様! おとう……おねえ……」
助けを乞う声が瞬く間に遠くなる。暴風が収まる頃、ジュネスの姿は跡形もなく消えていた。
*
「修行に出さずとも、私が弟を鍛えて差し上げましたのに。なぜ人間界へ?」
ドレスに付着した埃をはらいながら、アイリスがこぼす。気が強い娘とはいえ聡明な彼女は、大魔王である父の意見は絶対であることをわきまえている。故に成り行きを静観したものの、腑に落ちない点を問うてみたのだ。
倒れた王座を自ら定位置へと戻しながら、アコニートゥムは語る。
「お前の指導は、ジュネスには高度すぎる。人間界で緩い悪意に触れつつ、スローステップで邪な心を養うのがよかろう」
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