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わずかに俯き、アイリスはクスッと笑った。
「なんだかんだ言って、お父様はジュネスに甘いのよね」
「何か言ったか?」
「なんでもありませーん。では……」
「あわよくば、人間界の性悪女を娶って帰ってくればよい」
ドレスの裾をひるがえし去りかけるも、父・アコニートゥムの口から放たれた信じ難い台詞にアイリスは再び振り向いた。
「人間界の女を? どうしてですか」
意外にも、アコニートゥムは口角を上げてニヤリと笑っている。
「とんでもない性悪女が極まれに存在するのだ、人間界には。アイリス、お前も裸足で逃げ出したくなるほどのな」
「嘘でしょう。冷酷かつ残忍な悪魔界の氷姫という異名を持つ私よりも?」
真顔で返すアイリスに、我が娘ながら大したナルシストぶりだとズッコケたくなる衝動を抑えながら、アコニートゥムは人間界の悪女について説いた。
「まぁ、そうだな。古くは愛した男の陰茎を切り取った女や、嫉妬のあまり恋敵の手足を切り取りダルマにしてしまった女や……」
「まぁ、それは私と波長が合いそう……いいですわね、人間界の女!」
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