episode 01 悪魔の覚醒

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「え、これ彩女(あやめ)に?」  こうなることは、最初から分かっていた。目の前にいる冴えない男が差し出した紙袋には、ハイブランドのロゴが記されている。 「お誕生日おめでとう、彩女ちゃん。前から欲しいって言ってたよね、『ZUCCI』のバッグ」 ━━すべては、筋書き通り。  大山彩女は、ニヤリとほくそ笑みたくなる衝動を抑えつつ、小首を傾げた。 「でも、悪いわ。こんな高級なお品物……」 「いいんだよ。僕が贈りたいから、贈るの。見返りが欲しいとか、邪な気持ちなんて1ミリもないから!」 「そぉ……じゃあ、ありがたく受け取らせてもらおうかな……」  おもむろに両手を差し出し、彩女が丁寧に紙袋を受け取ったその瞬間。『邪な気持ちは1ミリもない』と言った舌の根も乾かぬうちに、いそいそと男はカフェの椅子から立ち上がり、彩女の手を取り囁いた。 「この後の予定なんだけど、ホテルの部屋を取っ……」  ピコポコペン、ピコポコペン……。  男の誘いを遮るように、彩女の携帯電話が小気味よいメロディを鳴らす。 「あら、電話だわ。彦一(ひこいち)さん、ちょっと失礼!」
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