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納得出来る殺人
「殺人事件が起きたら、ワイドショーでなぜこんな事件が起こるのでしょうって言いながら憶測を神妙な顔で話すだろう」
俺はペットボトルのお茶を友人に渡す。
「ほとんどの人間は犯罪を犯した人間を知らないし、警察も記者も全てを発表するわけじゃないからだろ」
友人はペットボトルのお茶をごくごく飲んだ。
「そうだ、だから納得も出来ないのは当たり前だし、不安なままだ」
「何が言いたいんだよ」
友人は焦れたように俺の顔を見た。
「いやさ、サスペンスドラマの犯人って、追い詰められたら動機を話すだろ、これでもかっていうくらい」
「ああ、言われてみればそうだな」
「髪の毛ほどいたり、眼鏡を取ったりするのも、わたしという人間はこんなにキッチリした人間ではないんだっていう宣言だと思うんだ」
俺はそう言いながら眼鏡をはずす。
「……何だよ、怖ぇよ」
「眠くなるまで、納得出来る動機を話すよ」
ペットボトルがぽこんと鳴った。
了
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